お名前.com 人口2億人を越え、アフリカ最大の人口を抱えるナイジェリアが深刻な経済危機に直面している。 2050年には4億人を越えてインド、中国に次ぐ世界第3位の国になると推計されている。人口の多さは成長の原動力で、ナイジェリアも2050年頃にはインド、中国に迫るような経済的なプレゼンスを得ているのではないか、ともみられていた。 危機は、深刻な外貨不足に表れている。外貨獲得の唯一の手段ともいえる石油輸出が減少し続けているためだ。外国企業の撤退、直接投資の減少が相次いでいる。UAEのエミレーツ航空では、外貨不足の影響でドル建ての航空運賃が支払われていないため、ラゴス(ナイジェリアの首都)向けの運航を停止している。 通貨ナイラは公式レートが1ドル=421ナイラと年初来25%下落しているが、併行する自由市場では同700ナイラまで下落している。 アフリカ第一位の産油国とされてきたナイジェリアで石油生産が減少しているのはなぜだろうか? 主としてニジェール川河口部のニジェール・デルタで産出される石油が盗難に遭うからである。油田そのものが盗掘されるほか、パイプラインからも抜かれてしまう。メジャーのシェルは7月にパイプラインの操業を取りやめた。 生産能力あるいはOPECの生産枠が日量180万バーレルあるのに対して実際に確保される産出量は110万バーレルに過ぎない。これは最近50年の最低水準である。アフリカ第一の産油国の地位をアンゴラに明け渡した。盗まれる石油は日量40万バーレルに達し、金額ベースでは2022年第一四半期だけで10億ドル相当の石油が盗まれている。 さらに長年における原油掘削、石油精製設備に対する投資不足も設備の老朽化となって生産を減少させる要因となった。従って、ナイジェリアはロシアのウクライナ侵攻によって高騰した石油価格の恩恵を受けていない。 同国の巨額に亘るガソリン補助金は、ナイジェリアのドライバーに世界最低のガソリン代(1リットル=60円)を提供しているが、その分、同国財政収支の悪化を招いている。ナイジェリアは実に昨年1年間で96億ドルという石油補助金を支出している。ナイジェリアのGDPの2%にあたる巨額である。ナイジェリア政府にとって世界的な石油価格の上昇は、低位に釘付けされているガソリン販売価格と市況の差を広げて財政収支を悪化させる作用をもたらす。 通貨ナイラ大幅なの下落は輸入価格を高騰させるとともに、インフレ高騰を招く。8月の消費者物価は前年比+20.5%という17年ぶりの高インフレにつながっている。このため、中央銀行は5月以降8月まで250ベーシスもの利上げをおこなってきた。さらに9月27日には一気に150ベーシス引き上げ、政策金利は15.5%に達している。 またナイジェリア中央銀行は外貨割り当てに際して、配分する外貨の交換レートを農業など優先分野には低く、不要不急と中銀が判断する業界には高いレートを適用するなど、恣意的な決め方をしてきている。このシステムが不透明だとの批判は大きい。 昨年、中央銀行は外貨準備が380億ドルとギリギリの水準に達した時には両替業者に対するドル売りすら停止している。冒頭のエミレーツ航空のような航空業界でもドル割り当てからはじかれた。 ナイジェリアのドル危機は2014年からだ。その年、石油価格は半年で52%も下落した。ナイジェリアでは歳入のほとんどと外貨準備の9割を石油輸出に依存する構造となっているため、大きな打撃を受けた。ちなみに2021年の段階で非石油収入が160億ドルに対して石油収入は1,450億ドルとなっている。2014年と違い、今回の石油収入減少は石油生産量の激減が主因である。 世界的な高インフレ、ドル高でデフォルトする国が出てくる可能性は非常に高い。