政府が物価高などの総合経済対策をまとめ、値上がりが続く電気・ガス料金の負担軽減策を盛り込んだ。暮らしや企業活動に不可欠な電気やガス。対策にはどれほどの効果があるのか。
電気代、都市ガス、そして燃料費合わせて、数万円程度の負担軽減になるよう最終調整している」。西村康稔経済産業相は26日、衆院経産委員会でこう説明した。エネルギー価格の抑制効果の額に言及したのは初めて。一般世帯の負担は来年度前半までで4万5000円以上軽減されるという。
ウクライナ危機による国際的な資源価格の高騰に加え、歴史的な円安によって、エネルギーの家計負担への影響は拡大している。
総務省が発表した9月の消費者物価指数では、前年同月比で電気が21・5%増、都市ガスは25・5%増となっている。
電力大手10社は火力発電用の液化天然ガス(LNG)や石炭価格高騰の影響で値上げを続けてきたが、全社が燃料費の上昇分を価格に転嫁する上限に達している。
このため、北陸電力と中国電力は国に申請が必要な抜本的な値上げを検討しており、各社に同様の動きが広がる可能性がある。
経産省によると、電気料金は来春以降さらに2~3割の値上がりが見込まれる。都市ガスの価格についても「円安などで見通しが立たない」(業界関係者)状況だ。
政府が負担軽減策を打ち出したのは、エネルギー価格を巡るこうした厳しい事情が背景にある。
年明け以降の値上げ分を負担するとなると、電気とガス料金を合わせて月3000円程度を軽減することになる。
ただ、エネルギーの価格抑制は「出口」を設定しにくく、財政負担が際限なく拡大する恐れがある。価格抑制を実感できる仕組みにできるかどうかがカギとなるが、効果を疑問視する声も出ている。
今年1月に始まったガソリン補助金は原油高騰に伴い補助額が徐々に拡大され、12月までの予算額は約3・2兆円となっている。
負担軽減策では「来年以降は上限を調整し、6月以降に縮減させていく」としているが、具体的な道筋は決まっておらず出口は見通せない。
電気・都市ガスも、発電などに必要な原油や天然ガスは輸入に頼っており、円安などの影響で価格が高止まりして軽減策の長期化や規模拡大を余儀なくされる恐れがある。
大和総研の小林若葉エコノミストは今回の軽減幅について「足元の水準からすれば負担が大きく減るわけではなく、恩恵を感じにくいのではないか」と語る。小林氏の試算によると、1年間で必要となる財政支出は、9月以降に支援額を半減させたとしても電気に3・2兆円、都市ガスに0・7兆円が必要になる。小林氏は「費用対効果を重視し、過大な財政支出は避けなければならない。支援が十分に価格に反映しているか確認する仕組みも必要だ」と指摘する。