ファミリーレストランの2大巨頭、すかいらーくホールディンス(以下、すかいらーく)とサイゼリヤ。両社の業績に明暗が分かれている。順調な回復を見せている「明」のサイゼリヤ。それに対して、すかいらーくは「暗」。今期の決算は赤字に転落する見通しだ。
すかいらーくの2022年12月期第2四半期決算は、売上高にあたる売上収益が1416億円(前年同期比11.8%増)、税引前損失38億円(前年同期は19億円の損失)となっており、顧客は徐々に戻って来ているが、赤字が拡大している。
同社第2四半期決算書によれば、赤字の理由には、原材料価格や光熱費の上昇などインフレの進行、閉店に伴う減損損失及び給与計算に関する臨時損失計上などが挙げられている。その結果、通期の予測では売り上げは3120億円と1.2倍に回復するものの、20億円の赤字に転落する見通しだ。約100店の大量閉店を予定している。
一方、サイゼリヤの22年8月期決算は、売上高1443億円(前年同期比14.0%増)とコロナ前の水準に近づいてきた。経常利益は108億円(同211.8%増)で、コロナ前の19年を上回っている。利益率はコロナ前よりも高まっており、V字回復したと表現して良いだろう。
すかいらーくは、ガストをはじめ、ジョナサン、バーミヤン、しゃぶ葉、夢庵など、多種多様な業態の集合体。それに対して、サイゼリヤはほぼサイゼリヤという1業態を経営していて、単純比較は難しい。しかし、すかいらーくの不振にはガストの不調が大きく影響している。
同じような低価格のファミレスである。なぜ、サイゼリヤが順調なのに、ガストは顧客がなかなか戻って来ないのだろうか。19~22年における売上高の推移と、22年1~10月の既存店売上高(前年同月比)の推移を見てみよう。
22年に入ってからの、既存店売上高の月次推移を見ていくと、全ての月でサイゼリヤの対前年比の伸び率が、すかいらーくのそれを上回っている。しかも、10月こそ、両社の対前年比の伸び率は近接しているが、1~9月ではサイゼリヤが上回り続けている。
コロナ禍における売り上げの減少も、すかいらーくは19年比に対して20年は77%、サイゼリヤは81%で、すかいらーくのほうが影響が大きかった。
また、すかいらーくの売上高は今年4月以降に回復が本格化してきたのに対して、サイゼリヤは年初より一貫して回復していたという違いがあった。
外食では仕入価格、人件費、光熱費、輸送費の高騰で値上げが続いていて、すかいらーくグループでも今年10月から平均で約5%値上げした。ところが、サイゼリヤでは価格を維持している。それも、好調の要因だ。
今までミラノ風ドリアやパスタだけ食べて帰っていた顧客が、アロスティチーニやデザートも注文するようになったので、顧客単価が上がっているから、価格維持も実現可能だ。22年8月期の既存店顧客単価は、前期比で約5%上がっている。
サイゼリヤには、イタリアンという専門業態の強みがある。そして、ミラノ風ドリアやアロスティチーニの爆発的な商品力が後押ししている。
一方のすかいらーくも問題点に気付いている。だから、ガストにから好しのあら揚げを組み込んで、売りにしようとした。しかし、から揚げの店は競合他社が多過ぎた。居酒屋業界では、総合居酒屋から焼鳥の「鳥貴族」、串カツの「串カツ田中」、海鮮の「磯丸水産」のような専門居酒屋へのシフトが顕著だ。それと同じ流れが、ファミレスにも来ている。ファミレスもまた、専門性の高い業態が選ばれる傾向が高くなってきている。
サイゼリアは昔から安くて親しみやすくファンが老若男女とファンが多かったが
昨今の値上げラッシュの中でもサイゼリアは値上げをしないという宣言が支持され競合のファミレスからお客が流れてきた可能性が非常に高い。