「国民健康保険料料が高くて困る」と悲鳴を上げている個人事業主やフリーランスの方は多いのではないでしょうか? 「国民皆保険制度」により、国民は必ず何らかの健康保険に加入しなければいけませんが、保険料は少しでも安くしたいもの。 この記事では、個人事業主やフリーランスの方に注目されている「国民健康保険組合」の概要、メリット・デメリットについて解説していきます。
「国民健康保険組合」の概要
日本の医療保険は、大きく職域保険と地域保険に分けられます。 職域保険としては、 ●民間の会社員を対象とした「健康保険」 ●公務員や船員などを対象とする「共済組合」や「船員保険」 などがあります。
地域保険としては、 ●市区町村が運営主体の「国民健康保険」(以下、「国保」という) ●特定の職種ごとに設立された「国民健康保険組合(以下、「国保組合」という) があります。
個人事業主やフリーランスの方の多くが加入している医療保険制度は、国保です。市区町村が運営する国保は、居住地で加入資格が得られますが、国保組合は、地域だけでなく、職業や業種によって加入資格が得られる点が大きな特徴です。
国保組合には、医師、歯科医師、薬剤師、弁護士、税理士、理・美容師、建設業界、食品業界など、さまざまな業種の国保組合があります。
一般的に国保の保険料は地域によって負担額に差がありますが、所得が多くなるほど負担も大きくなります。
ところが国保組合に加入した場合は、次項でご紹介するメリットのように、国保よりも保険料が安くなるケースがあります。
業種や条件が合えば、国保組合への加入を検討してみてもいいでしょう。
なお、法人事業所の事業主や従業員の場合、健康保険が強制適用となるため、国保組合には加入できません。
「国民健康保険組合」のメリットとは
国保は前年の所得で保険料が決まるため、収入が多ければ多いほど保険料も高くなります。
一方、国保組合に加入すれば、収入に関係なく保険料が一定になることが最大のメリットといえます。
例えば、Webデザイナーやグラフィックデザイナー、イラストレーター、コピーライター、カメラマンなどを対象にした、「国保組合」のひとつである「文芸美術国民健康保険」(以下、「文美国保」という)に加入すれば、負担額は以下のようになります。 ■令和4年度の保険料(組合員の収入が、多い少ないにかかわらず均等) ●組合員 1人月額 2万1100円 (医療分 1万6400円 後期高齢者支援金分 4700円) ●家族 1人月額 1万1600円 (医療分 6900円 後期高齢者支援金分 4700円) ●介護保険料 1人月額 5200円 (満40歳から64歳までの被保険者) 「文美国保」に加入するには、特定の団体に所属する必要があり、「文美国保」の保険料に加盟団体の入会金・会費を足した金額と、国保の保険料を比較するといいでしょう。
家族や、満40~64歳までの介護保険被保険者の人数によっては、一般の「国保」の方が「文美国保」よりも保険料が安くなる場合もあります。
ただ、単身者であれば「文美国保」の方が安くなる可能性が高いといえます。
個人事業主やフリーランスの場合、毎年の収入が一定していないこともあるため、保険料が一律の「国保組合」に加入していれば、支出面で安心といえるでしょう。
「国民健康保険組合」のデメリットとは
国保組合のデメリットについて解説します。
■被扶養家族の保険料もかかる 会社の健康保険や協会けんぽの場合は、被保険者の扶養家族には保険料がかかりませんが、国保組合には「被扶養者」という概念がなく、家族も被保険者として保険料がかかります。
家族の人数によっては、一般の国保の方が保険料が安くなる可能性があります。
■減免措置がない 収入が少ない場合でも保険料は固定のため、国保のように減免などの措置はありません。
収入が少ない場合は、国保の方が保険料が安くなる可能性もあります。
■加入条件が厳しめ 文美国保の場合、 ●日本国内に住所がある ●Webデザイナーやグラフィックデザイナー、イラストレーター、コピーライター、カメラマンなどのクリエーティブ職に従事するフリーランスである ●日本ネットクリエイター協会、日本イラストレーション協会などの、組合加盟の各団体の会員である の条件を満たす必要があります。
また、後期高齢者の方(75歳以上の方、または65歳以上75歳未満で広域連合より認定を受けている障害者の方)は加入できません。
なお、加盟団体に入るには、入会金や毎年の会費の支払いも必要になります。