防衛省が「反撃能力」の保有に向け、検討している長射程ミサイル開発計画の概要がわかった。10種類以上を同時並行で開発することが柱だ。
音速の5倍以上で飛ぶ極超音速誘導弾は2028年度以降、島嶼(とうしょ)防衛に用いる高速滑空弾は30年度以降の装備化を目指す。
12月中に閣議決定される国家安全保障戦略には、自衛目的で敵のミサイル発射基地などを攻撃する「反撃能力」の保有が明記される方向だ。
開発計画では、抑止力を高めるため、陸海空からの発射形態と、極超音速と高速滑空の飛行形態などを組み合わせ、計10以上の多様なミサイルの導入を図る。防衛省は関連経費として5兆円を財務省に求めており、安保戦略の策定に合わせ、内容と予算を正式決定する。
反撃能力の柱となる陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」は射程を伸ばし、地上、艦艇、航空機からそれぞれ発射できるように改良を進める。
地上発射型は26年度以降の配備を見込む。
極超音速ミサイルは既存の防空網では迎撃が難しい。自衛隊に導入すれば、日本への攻撃を計画する国をけん制する効果が期待できる。
地上発射型などで検討している配備の時期を当初の30年代から前倒しし、28年度以降を目標とする。
高速滑空弾は地上から発射後、弾頭部が分離し、超音速でグライダーのように滑空し、上陸してきた敵などを撃破する。
27年度に試作型を配備し、30年度以降の装備化を予定している。射程を延伸すれば、反撃能力の行使にも活用できる。潜水艦発射型の開発案も浮上している。
さらに、敵の艦艇を狙う対艦誘導弾についても複数のタイプの研究を始める。
政府は米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入も目指している。
トマホークで反撃能力の実効性を早期に確保し、国産ミサイルの量産化と配備を急ぐ構えだ。